4月23日、虎ノ門の居酒屋「鈴傳」に久しぶりに行ってきた。
この4月25日に閉めるということを伝え聞いて、もう一度行っておかねば後悔する、と考えたところ、同じように考えていた森隆さんに「行きましょうよ」とお誘いをうけた。森さんは知る人ぞ知る、有楽町「宝」などの人気居酒屋グループの統括マネジャーかつ総合ソムリエ(筆者かってに命名)として有名。いまは霞ヶ関の新店「ビストロW」にほぼ常駐している。
待ち合わせは鈴傳の開店時間という午後5時。ところが、ちょっと5分ほど遅れていっただけなのに、ノレンを上げたら、もうほとんど満杯である。入り口を入ってすぐ左側の奥で森さんが手を上げている。前の席に滑りこみセーフ。隣に地酒通のK氏や、いまはなき名店「夢酒」(森さんの作品)の初代店長を務めたH氏の顔も。
ご存知の方は多いと思うが、鈴傳は小さな店だが、細いテーブルに丸イスをぎっしり詰めて、50人から60人くらいすわれる。お世辞にもきれいな店とはいえないが、そこが気のおけない昭和のムード漂う居酒屋らしい居酒屋。なにせ表の大きな赤い看板に「うまい酒」とズバリうたっているところが凄い。霞ヶ関の官庁街と虎ノ門ビジネス街のはざまの、勤労オヤジのオアシスのような酒場なのだ。当然いつも常連さんがぎっしり。外にあふれて一杯やっている光景も珍しくなかった。
人気の理由は、庶民的な雰囲気だけではない。地酒の人気銘柄を気軽に飲める"名酒居酒屋"の魅力が他とは違うのだ。年季が入った薄茶色の壁に手書きの酒メニューが貼り出してあるが、どれも当代の人気銘柄、実力派。われわれが頼んだのも十四代に飛露喜、九平次。ちょっとミーハーか? ま、たまには日本酒の一ファンに戻って堪能した。日が高いうちに飲むと、一段とウマイ。全員うなづいた。
こんな酒が1合グラスたっぷりで、500円から600円台で飲めるのがありがたい。つまみは森さんが、やっぱりこれでしょう、と冷奴にざる豆腐、ポテトサラダ(に醤油をかける)。うまい酒があれば、料理なんてそんなにいらない。

