よき友・うま酒・商売繁盛 blog

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カッコいい飲み方、してますか?

2008年4月18日

 かなり前のことでどんな飲み会だったか忘れたが、ある若手の酒専門店経営者にビールを注いだ時、その注ぎ方に軽く注文をつけられたことがあった。
 私の注ぎ方はこうだ。一度グラスの3分の2くらいまで勢いよく注いで泡がしっかりのぼってくるまで待ってから、再びゆっくり注ぐ。ビアバーで覚えた二度注ぎを披露したわけだが、彼は顔をしかめて、一度に注いだ方がきれいだという。そういわれれば、そうかもしれない。ボトルを手に泡が固まるのを待っている図は、どこか間が抜けているかもしれない。影響を受けやすい私は、それから一度注ぎでなるべくクリーミーな泡を立てるように心がけてはいる。

 酒はただ飲んでもうまいが、こだわればなおうまいという飲み物だ。飲むまでの道のり、飲む所作や道具立てで、もっとうまくなる。より高い満足感を追求するコダワリ派は、カッコがいい酒か悪い酒かにもこだわるはず。それはファッションやクルマにより高い満足感を求めるのと同じだと思う。大げさにいうなら、酒の飲み方、どんな酒をどんな時に飲むのか、にその人のセンス、生きるスタイルや価値観まで表れる。 
 プロの酒屋として生きるなら、他人の眼をどこかに意識しながら、カッコいい酒のスタイルを身につけるように努めてほしい。その気になればヒントはどこにでも見つけることができると思う。

 たとえばワインのテイスティング。10年ほど前に、フランスはローヌのワイナリーと学園を舞台にした映画を観た。ブドウの自然栽培を貫く中年女性オーナーを主人公にした、邦画なら松竹大船調のとても品格のある映画だった。
 彼女が自慢のワインをふるまうシーン。ほのかに好意を寄せているスラリとした初老の紳士(大学の先生)が、ごく軽く1回グラスを回して香りをきいてから、口にふくんで満足そうに微笑む。グラスの上に寄せられた高い三角の鼻がカッコよく、サマになっている。やっぱ本場もんにはかなわん。この時以来、グラスをグルグルぐるぐる何回も回して、ふちから低い鼻を突っ込んで香りをきく(匂いをかぐ?)のはやめようと思った。テイスティングそのものもおっくうになってしまった。

 日本酒衰退のシンボルのように冷遇されることの多い一升瓶でも、時と場合によっては、カッコよく映えることがある。これも映画のワンシーンで恐縮だが、鬼才・故岡本喜八監督の30年以上も昔の作品に「ダイナマイトどんどん」という喜劇がある。ヤクザ同士の抗争を警察署長のアイデアによって野球の試合で決着させようというストーリー。組員がドスをバットに持ち替えて日々練習に励む、そのミスマッチぶりが実におかしい。
 それはともかく、一升瓶の話だ。一方の組のアニキ格でムショを出たばかりの若者(北大路欣也)が、愛人の小さな居酒屋のカウンターの中で一人酒盛りをしているシーン。ライバルの菅原文太が階段の上から盗み見ている。
 欣也は一升瓶を右手にドンとおいて、酒を湯飲みに注いではクイクイやっている。次々と注いでは水を飲むようにスルッと干す。たくましい体に丸首シャツ1枚。鋭い目をした若いヤクザの、そして一升瓶の、カッコよさといったらなかった。
 小さなカップ酒にだって、カップなりのカッコいい飲み方がある。それを知ったのは、大阪のA酒店を訪ねた時のこと。自販機だけのショップを日雇い労働者の寄せ場地区に何店かもっているので、取材させてもらった。
 Aさんの話では、労働者の多くは疲れた体にカツを入れるために自販機のカップ酒を飲む。だから、クーっと一気に飲み干して、空き瓶用の一斗カンにドーンと落として、サッといなくなる。チビチビ、ウダウダやらないところがいい。立ち飲み屋での飲み方も、こうありたい。

 こんな話をしているときりがない。
 居酒屋の日本酒の出し方にもいろいろあるが、ある酒販店主は、日本酒をグラスからこぼして升で受ける注ぎ方が嫌いだという。ワイングラスに八分目くらい満たすのが最もいいというのだ。もちろん、この逆もある。筆者はどちらかというと、逆の側かな。女性の多くは八分目派ではないか。第三派閥として、ぎりぎりこぼれる寸前で、ふちに盛り上げたくらいがカッコよくうまい、という日本酒好きもいた。口をとがらせてお迎えに行くのが、カッコいいのか、悪いのか。
 さて、お酒のカッコいい飲み方とは何か。おそらく酒の専門店の経営者なら誰にも一家言あるだろう。それをぶつけ合い、口角泡をとばしながら一献傾けるのもおもしろいのではないかと思う。(小島)

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