5月11日(日)、東京・信濃町の明治記念館で恒例の「酒人好の会」が開かれ、参加してきた。
主催は東京・町田市の酒専門店「酒舗まさるや」。経営者の園部松男さんは本格焼酎ブームの仕掛け人の一人として有名だ。
あるテレビ番組で"焼酎ハンター"と紹介されていたのをご記憶の方もいるだろう。それくらい九州から全国各地の個性派焼酎を発掘してきた。
筆者が強く記憶しているのは、青島の名産「青酎」。生産者別のボトルが棚に並んでいて、それぞれ味が微妙に異なっているのだ。
しかし、園部さんの原点は日本酒。年季の入った団地の中の小さな商店街の一角で、地酒専門
店として出発し、どんどん品揃えを広げて発展してきた。その発展の象徴が、蔵元とともに酒を楽しむ「酒人好の会」だ。会の名称には、園部さんによれば「貴方とお酒が主人公」という意味がこめられている。
年々規模が大きくなって、第17回目の今回は参加蔵元21社、来場者は募集300人のところかなりオーバーの360人。
一般の日本酒ファンに飲食店関係者がメイン。これでも断った結果というから、日本酒の不振はどこの話かと思えてくる。着席式のテーブルを囲んだ出品酒コーナーには、1蔵5品ずつ、計105の酒が出番を待っている。
開会は5時。司会を務めるのは、酒舗まさるやの後継者・長男の園部将(まさる)さんである。ちなみに将さんは写真(下の写真、中央の人)に見るように、会の間中、各テーブルを丹念にまわって接待。お客と談笑していた。「もう店は息子にまかせてあるから」という園部さんは余裕の表情だ。
さて、園部さんの主宰者挨拶の後に、今回は初の試みで、蔵元を代表して「黒龍」(福井)の水野直人社長がミニ講演を行なった。
水野社長は冒頭、今日の参加蔵元は若い人ばかりなのでビックリした、と語った。聞いている私もちょっと驚いた。黒龍の蔵元といえば、若手グループの代表のようなイメージをもっていたが、実際まだ44歳というが、ほとんど30代の蔵元の中では最年長ということなのだ。次々と新しい造り手やうまい 酒が出てきたことは、日本酒の底力の証明だ。
水野社長の講演は、日本酒が酒質的には甘口・辛口をくり返してきた歴史などを語ったが、やはり近年の低迷著しい現実にふれざるをえなかった。では、どうしたらいいのか。水野社長はこう提 案した。
酒質的にはみんなすばらしくなっている、またいろんなタイプの酒もできている。その半面、「ちょっと欠けているのは、お酒の楽しみ方、楽しむ文化ではないか」というのだ。その例として、江戸時代でさえ、自宅で飲む酒、行楽地で飲む酒、飲食店で飲む酒といったように飲み方・楽しみ方は多様だったと指摘。いまこそ温度や季節など日本酒の楽しみ方の文化を深めよう、と提案する。まったく同感だった。
その後、全蔵元が登壇して一言ずつ挨拶し、「十四代」(山形)・高木顕統専務の音頭で乾杯した後、お待ちかねの宴会に。とても105種類は飲めないので、数種類のコレハという酒に集中した。
まずはビール代わりに(失礼ないい方かな?)発泡性の酒からいこうか。お目当ては山形「くどき上手」が試みた"スパークリング吟醸"。普通の活性酒である"白"と、黒米を使った"赤"の2種類あって、どちらも予想通りグーッ、でした。若い専務さんが造りに入ったとのことで、新しい酒質や味への挑戦 が期待される。
次は広島は「賀茂金秀」、純米大吟醸「この道」の斗瓶採り。うすにごりの贅沢な酒で、久しぶりの大吟醸を堪能した。3番目は山口の人気銘柄「貴」、"蔵付き天然酵母仕込み"をいただく。資料のコメントには、『「自然派」「ヴィオディナミ」といったワインががありますが、日本酒における「自然派」をめざして仕込んだ』とある。どしっりとした酸とコク。冷酒で供されていたが、人肌かぬるめの燗酒でやったらこたえられないだろうな。「ゆるーい造りをやっている」と蔵元杜氏の永山貴博さんが壇上で自己紹介していたのが印象に残った。
4番目は「田酒」。いうまでもなく青森随一の名酒。今日は搾りたての"山廃純米の生原酒"という、田酒らしからぬ酒がお目当てだ。厚く旨みののったフレッシュさがいい。ただ、原酒は盃を重ねるにはチトきつい。非売品で商品化はしないという西田蔵元の説明だったが、なにか新しい酒を造りたいという意思表示が感じられる。安定した支持に安住しないこと。
5番目は、目先を変えて和歌山は梅酒ブームの先駆け蔵「雑賀」の"スパークリング梅酒"を試みる。同社の梅酒に清酒酵母を加え、瓶内2次発酵させて発泡梅酒にしたもの。雑賀俊光蔵元らしい独創的な工夫をこらした、補糖はしていないが、いわば梅酒のシャンパン、ロゼのシャンパンだ。味も爽やかで、これは男でもイケル。
こうしてみると、日本酒のうまさはもちのろんだが、奥行きの深さ、間口の広さ、その華やかな多様さにあらためて驚かされる。ここで紹介した酒は5品だが、すべて舞台での紹介の時に蔵元自身が、「今日はコレを飲んで」とアピールしたものばかり。
こういう楽しむ会は規模の大小はあっても各地で開かれている。蔵元はせっかく費用をかけて参加・出品するのだから、「コレがうちの勝負酒」とか、「これだけは飲まないと損するよ」とおおいに訴えてほしい。その言葉の力だけでわれわれはもう喉が渇いてくるのだ。「酒人好の会」でも、いまだ超人気の十四代の長い列を別にすれば、アピールした蔵元のところに客が集まったように見えた。
結論。蔵元は情熱をもって自慢の酒をアピールしてほしい。造ったら、売らなければ。
