"辛口の酒"を見直し、造り直す
"辛口"といえば、ひと頃は"地酒"や"うまい日本酒"の代名詞だった。今ではちょっとでも酒を知る人なら、「辛口だからうまい酒というわけではない」くらいの知識はある。それでも一般的には「辛口のお酒ないの?」がまだまだ幅をきかせている。それでいて辛くもない酒をオイシイ! といって飲んでたりする。一方、日本酒党の中には本当にガツンとくる辛口好きもいる。
このように"辛口"は主観的であいまいな概念になっている。そんな"辛口"にあえて一石を投じるような試飲会を開かれた。10月12日(日)、東京・渋谷のこまばエミナースで開かれた「味ノマチダヤ」主催の「辛口酒」試飲会だ。キャッチフレーズは"辛口百景"。
いつもながらマチダヤの試飲会はテーマ設定が面白く、これまでに日本酒や本格焼酎の
様々なトレンドをつくり出してきた。今回のテーマも、ある料飲店関係者が「そのま
まメニューの特集頁にしたい」と語っていたようにコンセプト明確なものである。
出品酒蔵は26社、来場者は取引先の飲食店主体で限定の100名。蔵元も来場者も圧倒的に若い人が多く、後者は女性比率も高い。各蔵の出品酒は辛口酒だけでなく、通常の酒も試飲に供していたが、ここでは辛口テーマの出品酒で印象に残ったところを、蔵元自身の説明も交えながら、簡単に紹介しよう。(写真は上が「貴」永山酒本家造場の永山蔵元、下が会場風景)
まず山形の人気銘柄「くどき上手」では、硬質米の美山錦を使って造った日本酒度+20の超辛口、低温貯蔵吟醸「ばくれん」を出していた。千葉の「福祝」は今年初めて造ったという低精白(山田錦70%)、日本酒度+5の辛口純米。
新潟「村祐」は特別純米(数値非公開)の辛口をユーモラスな「祐村」の名で出品。宮城の「栗駒山」は日本酒度+5の原酒を加水して+4の「甘い辛口」になったといっていた。酵母を殺さないで辛くするにはこのへんが限度ということだ。
同じく宮城の「乾坤一」は、辛いだけではなく米の味・旨味を残したい、かつフレッシュな感じの辛口をめざした、とのことで+10の特別純米辛口。青森の「豊盃」は、あえて"香り系の辛口"を造ったという特別純米を出品(+10)。(上写真、会場には熱心な若い女性の姿が目立った)
滋賀の「不老泉」は甘く感じられるアミノ酸の高い酒造りの蔵なので、辛口は不安だったといいながら、山廃吟醸の+9、"味系の辛口"を出した。島根の「開春」は+15の純米超辛口を、隣県山口の「貴」は「濃醇辛口80%」の名で、山田錦の精米歩合80%という超低精白酒(+10)をそれぞれ出品した。
こうしてあげるだけで、一口に「辛口酒」といっても、いろいろなバリエーションがあることがわかる。それは各蔵元が競うように自社独自の辛口酒をつくり出そうとしている表れだろう。
その背景には、味ノマチダヤ・木村賀衛社長が試飲会ごとのテーマを宿題のように出し続けていることがある。ここは若手蔵元の酒質と商品化の力量アップの場になっているようだ。
