お酒のボトル、ラベルは"メディア"である
伝統は革新されてこそ伝統であり続ける・・・もし、変わらぬことが伝統だと考えているとすれば、ちょっと思い違いだ。酒の商品デザインをみていると、つくづくそう思う。とくに日本酒のデザインは、もう少し斬新な、若い人や女性を意識したもの
(媚びるとは違う)があってもいいのではないか。
ボトルの材質・形状や色・大きさ(容量)、ラベルの形状・色、そこにのせられる商品名(ネーミング)・ロゴ・絵(写真・イラスト・漫画などふくむ)、コピー・形容詞、サブの肩ラベルやシール類、販促的な首かけのデザイン・掲載情報・・・など、1本の酒に関わる商品デザインの対象は案外いろいろ多様である。
日本酒のラベルを例にとると、今では久保田や八海山のように太い筆文字でどっしりと銘柄を書くスタイルが定番だ。若い人は昔から地方銘柄はこれが当たり前であったように考えるかもしれないが、意外と歴史は浅い。地酒・吟醸酒ブームの頃に普及したが、居酒屋の棚にズラリと並んでいる光景は壮観で、遠くからでも銘柄が読めて、そのまま品書きになった。
その頃はそれでよかったが、10年も20年もたった今でもそのままでよいのか。一度、買い手・飲み手の目から魅力的な商品とは何か、デザイン面から考え直すことが必要ではないか。
もっとも、各蔵の顔ともいえる定番の酒、主要商品のデザインには、手を加える必要のないくらいいいものがある。ファンになじんだものも少なくない。それが蔵元の一人よがりでなく事実ならば、それを変えるのはむしろ冒険である。
いまデザインで冒険しやすいのは、最近ふえているバラエティ商品だ。つまり、にごり酒や発泡酒・活性酒、低アル酒、無濾過・原酒、色のある酒、小容量もの、さらに梅酒など日本酒ベースのりきゅーる・・・など。
こういう酒は、案会ではなくてパーティ、晩酌よりもアペリティフ、贈答品よりもプレゼント、といった現代的なシーン・TPOに向いた日本酒だ。それだけにデザインも従来の伝統色からはずれた思い切った遊びや実験がしやすい。実際に写真でみるようなデザインの商品が続々現われている。とくに若手の新進蔵元は固定観念が少ない分、自由な発想の作品を送り出している。
といっても、あまりにトンデルものや、目立つだけのものにはいただけないものもある。ひと頃文字だけずらずら並べたラベルがいくつか出たが、これなどはよほどマニアックな飲み手にしか理解されないのではないかと思う。やはり奇抜なだけでなく、だれにも愛されるセンスのいいデザインが望まれる。
そういう商品だと、陳列棚の中から客の目を引いて、「カワイイ!!」「おもしろいね!!」「なんていうお酒?」といった会話が生まれやすい。ボトルもラベルも商品名自体も、一種の情報発信源、一つの"メディア"なのである。仕入れと品揃えの基準の1つに、酒質や味ばかりでなく、このデザイン性をぜひ加えてほしいと思う。
写真は、山形の発泡清酒の1つ、後藤酒造店の「BENTEN」(アルコール度9-10度、240ml、525円)。ボトルの形はオリジナルではないが、スモークの薄青色と相まってサイダーのような味にぴったりである。商品名を小さくして、その代わりにかわいらしいイルカが2頭、気泡を出しているイラストが発泡酒を象徴している。派手ではないが、好感度の高い作品だと思うが、皆さんはどう感じただろうか。
